ワンナイトラブでいい…割り切った関係を求める男の本音

バーで1人、もしくは女友達と飲んでいると、もちろんナンパ目的で声をかけてくる男性は多い。いかにも物色しにきている客、そうとは悟られないように密かに物色している客、マスターや他の客との会話を楽しみに来ている客、お酒や音楽を楽しみたい客。人がバーに何を求めるかはそれぞれだが、バーという空間は人間を観るには非常に面白い場所だと思うのだ。ここから本当の恋が産まれる可能性がどれほどかは知らないが、アバンチュールの産まれる確率ならそこそこありそうだ。

既婚者のTさんは週に2回、1人でとあるバーにやって来る。持ち帰りできそうな女の子がいないか物色しに来るのだ。私にも最初は優しかったけれど、何度か顔を合わせているうちにある日突然スイッチが切り替わり、「お前」呼ばわりされるようになった。「こいつはダメだ、ヤレない」という烙印を押されたようでやたら扱いが雑になったが、男性が本音で話してくれるのはここからである。

割り切った関係の方が楽?


Tさんは最近まで「バツイチで今はフリー」と偽っていたけれど、どうも「既婚者と分かっていても割り切った関係を受け入れてくれる女の子」にシフトチェンジしたらしい。確かに、騙された! と騒がれるよりは多少ハードルが上がってもその方が後々楽なのだろう。しかも割り切った関係を求めて来る女性も結構いるようで、ある日聞くと既婚者同士の合コンの予定がしっかりと立っていた。
まだまだ結婚に希望を抱いている独身者としては反面教師として彼らの成り行きを見守りたいと思うのだが、既婚者がこれほどまで積極的に割り切った関係を求める背景はどこにあるのだろう。 

恋愛結婚だったTさんの家庭は今では冷めきり、子供を介して以外、妻とは会話もないそうだ。食事もろくに用意されていないので外で食べることが多く、結果、飲み歩く。こんな話を聞くといつも、そこまで夫婦関係が悪化する前に軌道修正はできなかったのかと思うが、ターニングポイントが「ココ」と分かっていれば誰もが苦労せず人生の成功者になれるだろう。彼らも分岐点にいる時は気付かなかっただけなのだ。
被害者の様な顔をして嫁の悪口を言い、開き直ってアバンチュールを求めるTさん。求めるものが愛ではなくアバンチュールな分、失敗を恐れる気持ちはない。チャンスがあればガンガン行くし、割り切った関係と公言している以上、妙に強気でいる。
 
後日、合コンの結果を聞くと「ホテルの前までは行ったけど逃げられた」とのことだった。ガンガン責めているワリにお持ち帰りできた所を見たことがないのでぶしつけながら聞いてみた。

「成功することってどのくらいあるんですか?」
「まあ、たまーーーーに、ね。年に2、3回。」という返事が帰って来た。
年に何回かのアバンチュールの為に週に2回、年間100回以上もバーに通うのか。いや、きっと年に一度もアバンチュールできなくても彼は毎週通ってくるはず。夜を彷徨う我々は、灯火に惹き付けられ今夜もこのバーに集う走光性の虫のようなものだから。
(本木たま)

この記事を書いたライター

本木たま
放浪癖のあるフリーライター、コラムニスト。恋愛に関する記事を執筆中。最近ハマっているのは神楽坂の小路散策。

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