「運命の人」 元・外務省女性事務官の手記を読んでみる

TBSドラマ「運命の人」が、いよいよ佳境にはいった。

40年前の「沖縄返還密約事件」が題材


沖縄返還にからむ密約を巡って、「外務省情報漏洩事件」がおきた。

本木雅弘演じる、毎朝新聞記者弓成亮太に、外務省事務官三木昭子が密約を裏付ける文書を渡したことが発端だ。弓成が文書を渡した代議士が、国会でそれを理由に密約の存在を追求したことがきっかけで、漏洩の事実が明るみに出る。

三木事務官の出頭によって、舞台は法廷に移る。一審は、三木有罪。弓成は無罪を勝ち取る。

復讐の第二幕


山崎豊子原作のドラマでは、三木事務官が「あなたの力になりたい」といって、密約文書を積極的に渡したように描かれている。押しの強い、男性らしい弓成にいつしか惹かれていったのは、三木昭子のほうだった。

その背景には、病気で外務省を退職した彼女の夫の存在があったようだ。

人一倍プライドが高く、それでいて病気のために妻に養ってもらわざるを得なくなった夫の屈折した心は、ゆがんだ形で昭子に向けられる。妻の行動を逐一記録し、ことあるごとに嫉妬と愛情の複雑に入り交じった言動をなげかける。妻の生理日までメモし、浮気を疑う夫に、彼女がほとほと嫌気がさしても不思議ではないだろう。

そんな彼女の心の中に、弓成りという男性は眩しく写ったに違いない。そして、自分の満たされない日常から逃れるために、弓成と時間を共にした。

ドラマではそのように描かれていた、と思う。

復讐の第二幕


ところが、一審の敗訴を期に、三木昭子は捨て身の復讐に打って出る。

ドラマでは、三木を真木ようこが演じているのだが、これが彼女以外には適役がないというほどはまっている。「週刊新潮 3月1日号」に、吉田潮氏のこんなコメントが載っていた。

「で、問題の女が真木よう子。根っこがスレた女を演じさせたらピカイチ。電話で舌打ちするシーンで、真木よう子の真価が現れていた」

本当に、見ているほうが憎たらしくなるほど、スレた女になっている。

当時週刊新潮に掲載された手記を読んでみる


彼女の復讐とは、週刊誌に弓成との関係を告白するというものだった。

弓成のために機密文書を持ち出したのに、自分には有罪判決が下った。外務省も去る羽目になった。
それなのに、彼は罪に問われず、家族と暮らす日々を取り戻した。

なぜ私だけこんな思いをしなければならないのか。自分の人生を狂わせた男への恋慕が復讐に変わる時。彼女は、世間を味方につけ、男の名誉欲のために踏み台にされた女を印象づけようとした。

それではと、実際の事件に関して当事者である蓮見喜久子さんが語った「外務省機密文書漏洩事件 判決と離婚を期して 私の告白」と題した手記を読んでみた。

そこには、記者の強引な誘いに負け、関係を取り結び、言われるがままに機密文書を渡してしまったいきさつがセンセーショナルに書かれている。

一読しての印象は、女性のしたたかさが勝った告白だったということだ。

自分の弱さを随所に匂わせることで、その隙に乗じて接近してきた記者の強引さ、卑劣さが浮き彫りになる。男が強引に関係を迫り、女性はその圧倒的な力の前に屈する。分かりやすい構図だ。

世間の「情」に訴えるには十分な効果があっただろう。

記者にも「功名心」がなかったはずはない。でも、新聞記者としての良心に従って、密約を暴こうとする彼を打ちのめすには十分だ。
それだけに、今読むと「饒舌すぎる」という印象を受ける。

外務審議官付きとして異例の抜擢をされ、審議官からは大変可愛がられた。でも、ロマンスがあったわけではない。お食事や音楽会へもたびたびご一緒したが、娘さんのように思ってくれただけだ、等々、自分の優秀さと魅力について書き連ねている。

その審議官がヨーロッパ大使に赴任した先から送られてきた手紙には「貴女が私にして下さったすべての仕事は、まるで宝石のようだった」と書いてあったそうだ。

自分の無実を晴らすはずが、自己顕示の場になっている。西山さんと蓮見さんのどちらが積極的に相手と関わりを持とうとしたのか、真相は藪の中だ。

ただ、このようなくだりを読んでしまうと、蓮見さんの告白を鵜呑みにはできないなと思ってしまうような手記だった。

ドラマではいったいどのように描かれるのだろうか、興味は尽きない。
(初音/初音と綾乃)
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