いい年した女がフラれた 失恋し傷を負った女は立ち直りが遅い?

「別れたの……」友達がそう呟いた。でも、本題は違かった。別の用事があっての電話でのやりとりだった。その要件のついでのように、近況報告の流れでたまたまその話が出たのだ。

「カレとは別れたのよ……」彼女の声は落ち着いていた。「……ううん、大丈夫大丈夫。全然平気(笑)」彼女は仕方のないこととして捉えていた。「わかってたの……こうなるってこと……私が馬鹿だったのよ」私に、というよりも彼女は自分自身に言い聞かせるように言った。「もう終わったことよ。もう忘れたわ……」

別に失恋の慰め会のつもりではなかったが、彼女のあまりに落ち着き払った感じがかえって気になり誘ってみた。「たまには飲もっか」と……。

世間話やくだらないバカ話をしてビールを飲み干し、呑助女達はワインに移行する。いい感じで酔ってきたところで笑っていたはずの彼女は突然泣きだした。

心にくすぶってたものが、封印していた思いが放流したのだ。悪いものを吐き出すように、嗚咽を溢した。
そう、彼女はちっとも平気じゃなかったのだ。ただ自分の気持ちにフタをしていたのだ。平気なフリしてただけ、強がっていただけ。「キチンと泣いて吐き出そう。溜めてたもの全部出しちゃえ、出しちゃえ」
私は彼女の背中を叩きながらアトオシした。

年齢を重ねるにつれ、素直に“苦しい”とか“寂しい”とか“辛い”……などと言えなくなってくる。若い時はなんでもかんでも友達に一部始終を報告しあったものだが、大人になると友達といつもつるんでいるわけにはいかない。自分や相手の生活や環境、状況によりそうそうなんでもぶちまけるわけにはいかなくなってくる。

だんだん誰かや人に頼るわけにはいかなくなる。頼ることをしなくなる。また友達に「面倒臭いヤツだ」「迷惑~」だなんて思われたくない。

そして一人で悩み一人で解決しようとする。なんでも自分で片づけようとしてしまう。または自分の身に降り掛かった嫌なことを早く忘れてしまおうと無理に頑張ってしまう。頑張るつもりはなくとも自然とそういう“癖”がついてくる。

自分の弱みや本音を周囲に隠してカラ元気。なんでもなかったふうに装い自分の気持ちを誤魔化そうとする。捨てられたりフラれた場合、また年甲斐もなくみっともない恋愛をして異性と上手くいかなかった時などは情けない自分を自覚しているだけに他人から同情されるのが恥ずかしくなる。その場合は特に「大丈夫」なフリをしたり、その傷を見せないように隠したりする。

「傷ついてなんかない」
「落ち込んでなんかない」
「ひとつの恋が終わっただけ。これまで何度か別れを繰り返してきたんだから、へっちゃら」
「こんなことぐらい平気」
と自分に言い聞かせ無理に納得させようとする。

心に空いた穴を埋めようと仕事で紛らわせてみたり、好きなことや趣味に没頭してみせる。自分で自分の傷を早く治そうとして必死に忙しくしてみる。忙しぶるのだ。

だが自然治癒力は年とともに衰え、身体のことだけでなく心の傷だってなかなか回復しやしない。なかなかスッキリとは治らない。年をとったらとった分、治るまでに時間が要する。でもそれはもしかしたら、感情をうちに抱え込み、表面に出さないからかもしれない。無理に抑えこもうとしているからかもしれない。
悲しみに鈍感になろうとして虚勢をはり意地をはってるからかもしれない。

彼女の涙は恋した女の素敵な涙だった。
思いのこもった心から流した潤いの涙だった。

思いっきり泣いたあと彼女は照れ笑いしながら
「は~~恥ずかしかったけど、スッキリした!なんかサッパリした」
と鼻をかんだ。

……そう、泣くと何故かスッキリする。実は“泣くこと”は身体にいいのだ。“笑い”が健康にいいことは誰でも知っている。長生きの秘訣だとも言われる。またことわざにもあるくらいだ。
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EDITOR

神崎桃子
体験型恋愛コラムニスト 大手ポータルサイトにて数々のコラムを連載中。男女のズレや生態、恋愛市場の時事問題は得意。文章セミナー、婚活セミナー講師も務める

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