人間関係に疲れたら「プチ出家」のススメ

前回のコラムで「心が弱っているときは、不機嫌の種が生まれやすい。その不機嫌の種を解消するには、『他者と自分とを比べず』『自分固有の人生』を生きる勇気を持つことが大切」ということを書きました。

そうはいうものの、私たちは生きている限り、毎日誰かと会わなければならないでしょう。仕事を休めばクビになるし、ママ友の集まりに出なければ、子どもが遊んでもらえなくなる。そう思うと「他者と自分とを比べてしまう」環境から逃れることは不可能かもしれません。

「プチ出家」という選択


そんなあなたに勧めたいのは「プチ出家」です。「出家」といえば「世俗の生活を捨てて仏門に入ること」ですから、かなりハードルが高い話です。私は、「最低限の人間関係だけを残して、自分が煩わしさを感じている人や場からしばらく距離を置く」ことを提案します。

このコラムの相方・綾乃は、昨年末、仕事や友人がらみの忘年会やパーティ、ゴルフのお誘いを一切断って過ごしたそうです。これは、かなり勇気のいることかもしれません。でも、綾乃は「固有の自分」をしっかりと持っているので、そんなお付き合いがなくても、友人を失うことはないし、淋しいとも思わないのです。

会ったり話したり、何かを共有することで、お互いに刺激を受け、切磋琢磨し、その結果相手を認め尊敬できる関係を築くことができれば、友人は数人で十分です。

「恨みもなければ、恐れもない」境地


高校の古典の教科書にも出てきた『方丈記』の作者・鴨長明(かものちょうめい)は、50歳で神官の職を離れ、出家して京都郊外の草庵に閑居しました。

長明は『方丈記』の中で「遁世し、出家してからの私には、恨みもなければ、恐れもない。寿命は天命に任せ、命を惜しみもしないし、死を厭いもしない。身体など浮雲のようなもので、頼りなく、不安定なものだ。生涯の楽しみは、うたた寝しつつ見る夢に尽き、生涯の望みは、四季折々に出逢う絶景の中にこそある」と述べています。

世俗の人間関係と距離を置き、自分と向き合い、自分自身の過去と現在を引き比べ、自然に没入することで、己の安らかな心の境地に至っています。

「孤独」を恐れず「孤独」と向き合うことの大切さ


ニーチェは、「自分の魂の健康」に自信がなくなったら「私の友よ、君の孤独の中に逃げ込め!」と呼びかけます。「私の見るところ、君は、世間の大人物たちの立てる騒がしさのために耳をつぶされ、小人物たちの刺によって体中突き刺されている」と。

そんな世間的な付き合いに費やしていた時間を、自分の魂を回復させるために使おうではありませんか。自分の「座右の書」となるような、賢者の書物をひも解く。あるいは、未だ訪れたことのない土地に足を運び、自然の息吹を感じてくる。

「孤独」を恐れず、「孤独」と向き合うことを通じて、他人の言動や思惑に振り回されない自己を確立することが大事です。限りある時間と歴史の中で、いかに自分の人生を生きるのかを、じっくりと考える。そのために、賢者たちのように「プチ出家」をしてみてはいかがでしょうか。
(初音/初音と綾乃)

参考文献・『無常という力 「方丈記」に学ぶ心の在り方』玄侑宗久(新潮社)

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