「金にならない労働は仕事ではない」という夫たち

女は環境や状況により自分のやりたいことを諦めたり、自分のしてきたことをやめて犠牲にならなければならない場合がある……という話を前回書いた。

結婚において、また夫の転勤や転職、また妊娠や出産において女性は選択を迫られることになる。仕事をとるか結婚(旦那)をとるか? 今までの生活を捨てて新しい土地へ行くか?
また出産や育児に伴い仕事はずっと続けられない、産休がとれなければもうやめるしかない……。しかし、仕事を辞めて家事に従事したりまた子育てにかかりっきりでいると「お前も家にいないで働け!」という“働け男”の話である。

家事や育児に積極的に参加する“イクメン”などでっちあげられた話であり、現実は全てを押し付けれ、その上「キミも稼げ」という夫。彼らからすると「家事」や「子育て」みたいな儲からない仕事は女のモノであり、そういうことはちょこっとだけ“手伝えばいい”というスタンス。しかもたま~に、だ。

「手伝い」とは「ボクの仕事じゃないけど“仕方ないから”助けてあげるよ」ってこと。家事と育児に関しては男にとっては「当事者」ではなく、自分は「お手伝いさん」という立場なのである。

「働け男」のエピソード集


佐和子は32歳。大学を出てからずっと働いていて、職場で知り合った同年代の男とフツーに恋愛結婚。ちなみに仕事は普通のOLで男性の多い物流系の会社の事務職。28歳で結婚してからもずっと共稼ぎをつづけてきたけど30歳になって妊娠。

会社はけっこう昔ながらの古い体質で育休とか産休などはとりにくい状況下にあった。また佐和子が大学を卒業した頃は不況で、会社の体質が古いだのなんの言って就職先を選べる余裕はなかった。正社員になれるだけありがたいという感じであった。

その会社では女子社員が出産のためそこで一旦休んでも復帰はしにくく、元のポジションには戻れないどころか、わざと仕事を与えないで辞めさせよう、つまり自主退職にもっていこうとする……ま、よくあるパターン。
ずっと働いてきた佐和子は妊娠を機にずっと悩んでいたが、職場では立ち仕事なども多く身体はしんどく、またストレスからか不正出血が起こったりと大変だった。
仕方ない……本当は辞めたくはないけども退職を表明。身体と子供のことを考えるとその道を選ばざるを得なかった。

ダンナはそれまで表面上では彼女の身体とはじめての妊娠を心配するフリをしていたが実際佐和子が仕事を辞めると「これからカネかかるのに」「俺の給料も少ないのに」と、あからさまに不満モード。

今まで共働きでしかも子供ナシ……という、わりと経済的にはキツキツでなかった状況とその生活水準が当たり前だった旦那は自分にかけるお金が減るのを恐れたらしくこう言ったのだ。

「今までの生活水準を下げたくないから、キミも家でできる内職とか探してよね」

しかもその夫は佐和子が妊娠8カ月で動くのがだるくなっても「文章校正講座」とか「広告やチラシ作成」とか「通信添削」などと家でできる仕事系のパンフレットを幾つも取り寄せ、「月2万、せめて月2万でいいんだ。それくらい稼いでよ!」と言ってきたのだ。

身重な彼女はこの思いやりのなさにブチ切れこの時点で怒り狂って実家へ。夫は仕方なく、佐和子の実家に迎えにゆき、土下座に近いことをしてなんとか帰ってもらった。

そして無事に玉のような男の子が産まれ、バタバタしつつ何とか育児にも少しずつ慣れてきた半年後……、夫はまた「そろそろ育児にも慣れてきたようだし、月2万くらいは稼げるよね」発言。

この2万という数字がどこからでてきたのかは不明だが、2万程度ならば彼女の負担にならず女でも楽に稼げる額と思い込んでいるらしい。
『働け働け!』ってまだ歩くことさえできないこんな小さい子を抱えどうやって働けというのか? 佐和子は、再びブチ切れ実家に帰る。夫はまた彼女を実家へと迎えに行ったのだか、口先だけでは謝ってくれても根本的にはわかってないし何も変わらないという。

佐和子いわく「きっと彼の自慢のお母さんのせいだわ……」と漏らした。旦那の実家は自営業で、彼のお母さんはお父さんの仕事を手伝って出産直前まで働きそして産後3カ月くらいで仕事に復帰したらしい。それからもずっと休みなく働きづめなうえ、家事も全てひとりでこなしていたとか……。
そういう働き者のスーパーウーマンのお母さんを見て育ってきたから、彼は自分の母親のしてきたことが当たり前であり、その母親ができたことは女が普通にやることであると思い込んでいるのだ。

「旦那からしたら自分のお母さんと同じことをしない女は全てナマケモノ。そう出来ない女はおちこぼれ……なのよ。それは理屈ではなく、幼少期からの根深い、根強い“刷り込み”だわ。だからこそ恐ろしいし、その刷り込みを変えることなど出来ないんだと思う」
……と佐和子は嘆いた。

また、家事の手伝いにおいても簡単なゴミ捨てや、たま~に食器洗いをしたぐらいで偉そうにする男もいる。『仕事してるのに手伝いまでしてボクちゃんってエライ!』と……。


「『カネを稼げ!』とさんざんいう割に、ダンナは全く家事を手伝ってくれない。“お金にならない仕事は仕事じゃない”ので、そういう無益なことはやりたくないらしい。
でも世代的に男女平等教育を受けて育ってきてるから、表面上だけは理解のあるフリをして、1カ月に一度、皿とか洗ってものすごくデカイ顔をするの! “仕事もこなして家事も手伝っちゃう俺~”に酔っている。“オレってイクメン~”などと勘違いしている! それが死ぬほど腹立たしい。イクメンてなに? マスコミが生んだ妄想?」

「彼にとって“自分で稼いだお金は自分のもの”。共働き時は、家賃と食費・光熱費等は 折半していたんだけど、それ以外は別会計だった。私が派遣切りにあい収入がなくなり、彼に生活費をもらうことになったのだけど……。彼は私に生活費を渡す時にものすご~く惜しそうな顔をする。
私の趣味や買い物の支払いでなくとも請求書を出すとすごく嫌な顔するの。『金食い虫め!』みたいな感じで……。二人のためにお金を遣う、結婚生活維持の為にお金を遣ってるという感覚がわかってないみたい。彼の金銭感覚は基本独身時のまま。私は“お金を頂戴している”という形……」


「昔の“家にいるだけでよかった“専業主婦”がうらやましい。むしろ“お前は働かないで家にいろ!”と、家に縛りつけられる生活なんて今の私にとっては天国のよう。今は“子供を育てて、働いてお金を稼いで、家の中のこともちゃんとするように”と男や社会からプレッシャーをかけられているみたい。それも女が、妻が全部ひとりで! 
家事もしないで、子育てのいいところだけつまみぐいして、『男は仕事だけしていればいい』……ってすごく楽だと思う。私は旦那の立場がうらやましい。そうそう、それだけ仕事に専念してるんだから将来ものすごく出世するよね?(嫌味)」

……結婚しても「働くのが当たり前」。しかもそれは家事でなく賃金の出る労働でないと認めてくれない夫は意外と存在しているのである!

昔と今では逆。
昔:「お前は家にいろ!」「女は外に出ないで家を守るのが仕事だ!」
今:「オンナも外に出て働け!」「稼げ!」
……とこんな感じである。

しかし時代の背景とともに男の言ってることはまるで正反対だが、「自分の母親とおなじように妻にもしてほしい」というのは昔も今もまったく同じなのではないだろうか?

昔は自分の母親がいつでも自分の帰りを待っていてくれて、家にいたから、「俺の母さんみたいに、お前も家にいろ!」、そして、今は自分の母親が外に出て働いて、家事もこなしてたから、「お前も俺の母親みたいに、ひとりで全部やれ!」と……。

男は自分の妻に自分の母親像をかぶせるのだ。「キミも自分の母親のようになって欲しい」……と。
(神崎桃子)

この記事を書いたライター

神崎桃子
体験型恋愛コラムニスト 大手ポータルサイトにて数々のコラムを連載中。男女のズレや生態、恋愛市場の時事問題は得意。文章セミナー、婚活セミナー講師も務める

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