名作歌舞伎に学ぶ「大切だけど分かりづらいこと」を伝えるコツ

たとえば、得意先に込み入ったプレゼンをするとき。
たとえば、相手が気付いていないであろう不満を恋人に言いたいとき。
 
仕事においても恋愛においても、大切なことを伝える場面は多々あります。そして、そういう大切なことに限って、相手には難しくて伝わりづらいことだったりするわけです。そんなとき、どうしたらうまく伝えられるだろうかと、誰もが悩みますよね。
 
そんな悩みを抱える人に、ぜひ紹介したい「歌舞伎」の演目があります。それは「高坏(たかつき)」。故・十八代目中村勘三郎さんの十八番で、正月の公演で披露していたそうなのですが、これがどうやら、とても面白いらしいという評判。
 
次郎冠者(大名の従者)が調子に乗って高坏で酒を飲んだ結果、酔っ払ってふらふらになり、勢いづいて自然と下駄でタップダンスをしてしまうという、踊りがポイントの演目なのですが、知り合いの歌舞伎ファンの女性は、初めてこれを鑑賞したときあまりの楽しさに驚いたのだとか。
 
普通、歌舞伎と聞くと「内容が難しくてあまり理解できない」「ストーリーや見せ場を予習しておかなければならない」「言葉が聞き取れなくて退屈」などと、敷居の高いイメージがありますよね。
 
しかしこの「高坏」は、勘三郎さんの器用なステップや、軽快な音楽、美しい舞台、そして「下駄でタップダンス」という斬新なテーマなど、その全てが、歌舞伎に興味のない人、普段歌舞伎を見ていない人にも楽しめるように作られているので、難しいことは分からなくてもとにかく楽しめます。
 
実は、この演目は昭和期に、十七代目の中村勘三郎さんが、自らの十八番として作り上げた新作だといいます。由緒正しい歴史を背景に、新しいエンターテイメントとして歌舞伎を提供するために、タップダンスとの融合をはかったのです。
 
その時すでに「難しい」というイメージがあった歌舞伎が、誰にでも楽しめるように、との十七代目の配慮。その意志を継いだ十八代目も、きっと正月というめでたい時期に、どんな人でも理解できる楽しい演目を上演したいと思ったのだと考えられます。
 
私たちは、この「高坏」から、難しいことを伝えるコツを学ぶことができます。「高坏」は、歌舞伎という文化、芸能の魅力を、もともとそれに興味がない、知らない人にも分かりやすく楽しく伝える演目です。
 
私たちも、自分たちが大切だと思い、とにかく伝えたいことを、ただ、真正面から伝えるのではなく、相手が楽しい、面白い、わかりやすいと思う形で伝える。そうすれば、きっと伝わるはずなのです。
 
具体的には、デザインや演出に凝った面白いプレゼンをしてみたり、彼氏に不満を言うときは、手紙にしてみたり、演劇仕立てのビデオレターにしてみたり。
 
コミュニケーションは内容もさることながら、演出・工夫の点が実に大きな要素を占めます。「なんで分かってくれないの?」とイライラするのではなく、「楽しい伝え方」を工夫してみる、「相手のために演出プランを練ってみる」、そうした「親切な遊び心」を忘れないようにしたいものです。
  
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 (五百田達成)

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