最近、めっきり涙もろくなったあなたへ ~脳の仕組みを考える~

「年取ってからすっかり涙もろくなっちゃった」
この言い回し、よく耳にしますよね。涙もろくなるのは、老眼や腰の痛みなどと同様、年を取ったことを実感する変化の代表格。「涙もろくなっちゃっていやだわ」など、ネガティブな表現の印象がありますよね。
 
では、どうして人は年を取ると涙もろくなるのでしょうか。生物学的には「老化により大脳の前頭葉にもっとも早く機能低下が起こり、感情抑制のコントロールが十分に出来なくなり、その結果、涙もろくなる」という説が有力なようです。老化による大脳の機能低下、などと言われてしまうと、自分が老化している事実を目の前に突き付けられたようであまり良い気がしませんね。
 
今回は違うアプローチで、この現象を説明してみたいと思います。
 
あなたが最近涙もろくなったな、と感じた瞬間や、思わず涙を誘われてしまった瞬間を思い出してみてください。そこにはある程度の経験・歴史が、あるはずです。年をとったからこそ分かる、人情とか。
 
若いころは、こーんな展開あるわけないじゃん、などと冷めた目で見ていた恋愛ソングや恋愛ドラマに対して、ある程度年を取ってから「ああ、私にも似たようなことあったな。あの頃付き合っていた彼とはこんなことがあったな。この主人公の気持ち、私にも痛いほどわかる……(ほろり)」などということが多いのではないでしょうか? 分かりやすいところでいえば、失恋のつらさなどは、幼稚園児や小学生では分かりません。10代・20代と適度に失恋してきた人だけが、ドラマの中の主人公に自分を投影できるというわけ。

もちろん、若いときだって他人の感情に寄り添って涙を流すことはあります。しかし、年を取るということは、その分いろんな経験をそれまでの人生の上に積み重ねていくということなのですから、若い人よりたくさんの経験をして、たくさんの感情を味わってきたということは当然ですね。
 
つまり、30代の人なら、10代のオトナに対する不信感も理解できるし、20代の社会に出たての初々しさも理解できます。50代の人なら、30代の将来に対する不安も、40代の家庭問題も理解できるのです。年を取れば取るほど、あなたはたくさんの人のさまざまな感情を理解し、寄り添うことができるようになるのです。共感して、涙腺が刺激される確率が高くなるというわけ。
 
涙もろくなることは、あなたがこれまでの人生でたくさんのことを経験し涙を流し、乗り越えてきたことの証なのです。あなたはこれまでの人生で涙を流してきた分だけ、涙もろくなるのです。こう捉えてみれば、老化現象のひとつとされる涙もろさも悪いことではない気がしますね。今度涙もろくなったと実感したときは、年取ったな、いやだなーと思わずに、あなたの豊かな思い出たちに思いをはせられるといいですね。
 
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(五百田達成)

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