「ありがとう」と「すみません」。正しく使い分けてますか?

突然ですが、少し普段の生活を振り返ってみて欲しいことがあります。
あなたは誰かに感謝するシーンで「ありがとう」という言葉を使っていますか? 
そうではなくて「すみません」という言葉を使っていませんか?
「ありがとう」と言うべき時に「すみません」を使ってしまうのは、どうしてなのでしょうか。今回は、その理由を探ってみたいと思います。

まず、「ありがとう」と言うのは、どんな場面でしょう? たとえば

・ちょっとハサミを取ってもらった

・エレベーターで扉の開閉ボタンを押してもらった

・珍しいお菓子をいただいた

というように、誰かに何かをしてもらったときということが考えられます。つまり「感謝する場面」というのは、「誰かが自分に何かをしてくれた場面」と言えます。何らかの利益、つまりプラスが自分にもたらされているわけです。ところが、こうした感謝の場面では、たいてい同時に相手には手間や負担が発生しています。「忙しいのにわざわざ取る」「ボタンを押して待つ」「選び、買い、届ける」といった具合に、労力や時間、お金などがかかっています。つまり、相手の行為によって発生した「自分にとってのプラス」に注目するのか、「相手にとってのマイナス」に注目するかが、感謝か陳謝かの分かれ道となるのです。自分のプラスに注意を向けて、そのありがたみ・感謝を言葉にするのが「ありがとう(ございます)」ということになります。

反対に、相手のマイナスに注目して、それに対して陳謝・おわびするのが「すみません」や「申し訳ありません」という言葉になります。たとえば、「結婚おめでとう!」などと祝福された時に、「すみません」と答えることはないでしょう。おそらくほとんどの場合で「ありがとう」と返すことに。それは、祝福するという行為には、相手にとってのマイナスが含まれることはまれで(わざわざ結婚式に来てくれた、などはあるとしても)、言われたことへの感謝をストレートに伝える「ありがとう」が選択されるのです。しかしながら、ほとんどの場面では「自分にとってのプラス」と同時に「相手にとってのマイナス」も起きていて、あるタイプの人はついそこに目を向けてしまいます。その結果、「ありがとう」よりも「すみません」と、言ってしまうのです。

「ありがとう」は、自分にとってのプラスに注目をした言葉。ですがそれは自分勝手という意味では決してありません。相手からの親切としっかり向き合い、それに対してきちんと「ありがとう」と言うのは、とてもすてきなこと。

どんなに手間暇がかかっていようとも、相手としてはマイナスとは思ってない(むしろ楽しい、うれしい)場面も多々あります。そこで勝手に想像力を発揮して、「なんだかすみません」「大変だったでしょう」と、マイナスを指摘するのは言葉の本来の役割としては間違っている行為。ぜひ向けられた好意をそのまま受けとり、改めてその大切さを実感しながら「ありがとう」という言葉を発するようにしましょう。
(五百田達成)

参考文献:岡本真一郎『言語の社会心理学 伝えたいことは伝わるのか』(中公新書、2013)
 
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