イケアの家具はどうして人気があるのか?

突然ですが、あなたはイケアに行ったことはありますか? イケアと言えば、世界的に有名な家具ショップ。中国のイケアの店舗では、展示されているベッドで買い物客が爆睡!なんてニュースも話題になりました。

イケアで買い物をした経験がある人は知っていると思いますが、イケアで取り扱っている商品はほとんどが組立式です。説明書と格闘しながら、自分で家具を完成させなければなりません。当然すでに出来上がっている商品を買ってくるより手間がかかりますし、本人の腕次第では既製品に比べて残念な出来栄えになることもあります。それでもイケアの家具が、世界中で人気を誇っているのはどうしてでしょうか?

行動経済学者のダン・アリエリーは、著作「不合理だからうまくいく」の中でこの現象を説明しています。彼はイケアの家具を自分で組み立てたことで、その家具にとても愛着を感じていることに気がつきました。もちろん彼が設計したわけでも、木材を切り出したわけでもありません。にも関わらず、彼はその家具に「自分のものだ」という強い所有意識を持ちました。

自分で作り上げた作品や持ち物に対して誇りを持つことは、人間としてとても自然な感情です。しかし私たちはその作品に愛着を抱くだけでなく、しばしば過大評価をしてしまうことがあります。ダン・アリエリーは、この労力に伴う過大評価を「イケア効果」と名付けました。

氏はこの効果を、以下のような実験で実証。まず実験協力者Aに、説明書きを見ながらおりがみを折ってもらいます。出来上がった作品に対し、買い取るならいくらの値をつけるかを聞きます。また次に、通りがかった実験協力者Bに作品を提示し、いくらの値段なら買い取るかを尋ねます。このようにAとBそれぞれの値段を集計して平均値を求め、その差を比較するという実験です。どんな結果になったと思いますか?

分析の結果、グループAでは平均して23セントの値を付けたのに対し、グループBでの平均はたったの5セントでした。実に5倍近くの差が生まれてしまっていたのです。つまり「人は、自分で作ったものは、実際よりもすごいと思ってしまう」ということです。

もちろんこのイケア効果が働くのは、家具やおりがみだけではありません。あなたも自分の作成した提案書やプレゼンにダメ出しをされて、悔しい思いをしたことはありませんか。あんなに時間をかけて準備したのに……。こんなに素晴らしいものができたのに……。なぜそれを評価してくれないんだ!と怒りが爆発。

と、その前に、これからはこのイケア効果について思い返してみてください。その提案書は、冷静に考えるとそれほど素晴らしくないかもしれないのです。他人からのダメ出しを、素直にアドバイスとして受け取れるようになるかもしれません。

また人にアドバイスする立場になった時も同様です。自分が指導する相手だって、きっとイケア効果のワナにはまっているはず。冷静になれない相手に対して「なんて思い込みが強いんだ!」と見放してしまうことはせず、プライドを傷つけない形で丁寧に説明しましょう。

すでに述べた通り、自分の作品に愛着を持つのは人間の自然な欲求です。しかしその愛着は、私たちから客観的な判断能力を奪ってしまうことがあります。このことを知っておくだけで、自分を冷静に見つめ直すことができるはずです。
(五百田達成)

※参考文献 ダン・アリエリー 櫻井祐子訳(2014年)『不合理だからうまくいく 行動経済学で「人を動かす」』早川書房

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