あなたのコミュ力が劣化する!? 「伝わらない」経験のすすめ

誰もが求められるコミュニケーション能力。現在、コミュニケーションという言葉は、いたるところにあふれています。「うまくコミュニケーションをとらないと」「コミュニケーション能力をアップさせたい」こんな風に思ったことがあるでしょう。
僕も心理カウンセラーとして、コミュニケーションに関する相談を受けることは多いですし、講演などで話す機会もあります。
そんなときに思い出すのが、劇作家である平田オリザのエピソードです。彼は劇作家であると同時に、演技指導などのノウハウを用いて、コミュニケーションについて大学で研究も行っています。
彼曰く、コミュニケーションが成り立つには「伝わらない」という経験が必要とのこと。「伝えたい」気持ちは、「伝わらない」という状況がないと出てこないし、その「伝えたい」という気持ちから生まれるものが強い「コミュニーション」というわけです。

『伝わらない』状況の中であえてコミュニケーションを!


たとえば、小学校や中学校のクラス内のコミュニケーション。全国には、小学校1年から中学校3年まで30人で1クラス、9年間クラス替えなしという地域が結構あるそうです。
こういう閉じた環境の中で、コミュニケーション能力を上げようと、毎朝クラスの前でスピーチ練習をしても、効果はあまりありません。なぜなら、そうした環境の中では、お互いのことを十分過ぎるくらいに知っているからです。
知っているメンバー相手だと「伝わらない」という悔しい思いをすることがないので、「伝えたい」というモチベーションが湧き出てこない。「伝えたい」という気持ちがない状況では、コミュニケーション力はアップしないのです。

このことは、大人となった私たちにも当てはまります。同じメンバーで仕事をしていたり、ずっと同じ仲間としか遊んでいたり、ということはないでしょうか?
もちろん気心知れた面々で仕事を進めたり、プライベートを共にしたりということも悪いことではないのですが、いつもそういう環境だと、「伝わらない」という経験をすることがありません。
そんな状況で、例えば「新しい取引先と仕事を始める」なんてことに直面すると、とっても戸惑うことになります。初対面の人相手に、普段は意識していないコミュニケーション能力をいきなり発揮しようと思ってもなかなか上手くいかないからです。
ですから、普段から意識的に「伝わらない」環境に身を置くことがとても大切。「伝わらない」経験をして、「伝えたい」という気持ちが心に湧いてくれば、自然とあれやこれやと工夫をしてコミュニケーションを試みることになるからです。

・部署や会社を越えた交流会や飲み会があれば意識的に参加してみる
・自分の知り合いが少ないイベントでも誘われたらとりあえず行ってみる
というように、身近なところにもチャンスは案外あります。まずは自分のできる範囲から、無理をせずに「伝わらない」を経験してみる。そこから、うまくコミュニケーション能力を上げていきましょう!
 
※参考文献:平田オリザ『わかりあえないことから―コミュニケーション能力とは何か』(講談社現代新書、2012)
(五百田達成)

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