私の価値観がおかしいの? 思ってたのと違う「こんなに貯金のない男」

「なんで、どうして男ってああなの……。理解できない!」
男性との違いにそう嘆く女性は数多く、その悲痛な声はあらゆる面におよぶ。恋愛、結婚観、経済面、そして日常のささいな行動などなど……である。
「男と女ってこんなふうに違うんだ~」と面白がっていられるうちはまだいい。時にはそのわずかな違いが、男女の双方にとって深刻な別れを引き起こす。今回はそんなズレから結ばれなかった男女の物語である。

「……え、それだけ……?」驚くほど貯金のない男


「私が悪いんです」
今回、取材に応じてくれた女性は開口一番そう語った。彼女の名を仮にA美としておこう。A美は29歳。最近、結婚まで考えた36歳の彼氏のB男と別れたばかりだ。友人の紹介で知り合ったB男は誰もが知るような一部上場企業に勤務。そのことだけを考えて付き合った訳ではなかったが、B男の手堅い勤め先に安心した部分も確かにあったと彼女は漏らした。

「やっぱり結婚となると、経済面のこともいろいろ考えないといけないし。その点で彼は安心だと思っていました」
最初になにかがひどくおかしい、と思ったのは、そろそろ結婚しようかという話が出始めたデートでのことだったのだという。式はどうする、だとか新居は、だとかの詳細を決めるに当たって、B男は笑いながらこう言ったのだそうだ。

「俺、ぜんぜん貯金ないからさ。そういうのは全部A美が出してくれよ!」

「それまでにも、彼の金遣いが私よりも荒いな、と思ったことは何度もありました」と、A美はうつむきながら答えた。三度の食事はほぼすべてが外食、デートの時も割り勘にしようとすると「いらない」と気前よく払ってくれる。B男の趣味はあるアイドルグループのDVD観賞だったが、彼女らの何万円もするDVDボックスに惜しまず大金をつぎ込む……などなどだ。

「でも、私の家庭環境によって培われた金銭感覚は世間とはズレてて彼は普通なのかとも思ってました」
中堅メーカーに勤めるA美自身は、手取り16万円に満たない派遣社員時代を耐え数年前にようやく正社員の座をつかみ取った。自営業を営むA美の実家は決して裕福ではなく、彼女は常に慎ましい暮らしを心がけてきたのだと言う。

「両親が苦労してきた姿を見ているので、お金のことはいつも頭にあったような気がします。だから大学は奨学金で出ました」
就職してからもA美は奨学金の返済に追われた。ようやく完済したのはつい最近のことらしい。それまでA美は家賃の掛からない実家から片道1時間半も掛けて都内の会社へと通勤し、乏しい給金のなかから家に食費を入れていたのだとか。化粧品は100円ショップ、服はプチプラファッション、また見苦しくない程度にリサイクル店などで賄うこともあったらしい。

「……自分がケチ、というか貧乏性なのは知っていました。だからおかしいのは彼じゃなくて私なんだろうなぁと思って、違和感を封じ込めて来たんです」
けれどA美のその忍耐は、ある日冗談交じりにB男の預金通帳を見せられたときに崩れ落ちた。そこには13万円も満たない金額が記載されていたのだと言う。正確には128,963円。A美は衝撃のあまり今でもその数字が忘れられないのだと語った。

「え?え~~~っっ!! て思いました。彼は私より10年近く勤続年数が多くて、勤めてる会社の規模だってずっと上。彼のお給料の額はだいたい想像はついてました。彼は単身向けの社員寮に入っていて、その家賃の額も知ってました。だからいくら彼の金遣いが荒くても、年齢的にも独身男性の平均的な貯金額くらいはあるだろうって思い込んでたことがその時全部否定されたんです」
A美はその時、「正直、目の前が暗くなるようなショック」を受けたのだと語った。奨学金の返済に追われていた自分でさえも、その時3桁の貯金はあった。それなのに自分よりもずっと給金を得ているはずのB男にはそれしかない……。そのことを知ってから彼女は悩みに悩んだという。

「結婚したら変わってくれるだろう、とか、借金がある訳でもないんだろうし、とか。金銭感覚が違う以外で彼に特別嫌なところはありませんでしたし、そんなことで別れるのは私のわがままなんじゃないのか……とか」
けれどその貯金額暴露事件の2カ月後にA美が出した結論は「B男と別れる」だった。経済に関する価値観が異なりすぎる自分と彼とでは結婚生活など到底うまくいかないだろうと思ったからだ。

「彼に落ち度はありません。『自分がこうだから彼もきっとそうだろう』とどっかで思い込んでいた私が悪いんです」

どちらが悪いというのではないけれど……


この話を聞いて、あなたはどう思っただろうか。女性と男性の違いは多くあるが、双方は互いのそれに気付かず自分の感覚で物事を判断する。自分の中の“常識”である。ことに女性は生真面目さゆえにその傾向が強い。

「私がこれだけしているんだから、彼もきっとそうだろう、このくらいは当然やっているに違いない!」
……と、無意識のうちに思いこんでしまうのだ。A美のような地道な努力家は特にそう考えてしまいがち。そして「自分の努力レベルに達しない男性」をいつの間にか許せなくなってしまうのだ。今回のケースの場合はそれが「B男の貯金額」だった、ということなのだろう。

総務省統計局が単身世帯を対象に行った調査によると、30歳未満の男性の貯蓄現在高の平均が151万円なのに対し、30歳未満女性の貯蓄金額は198万円と、50万円近く女性のほうが多いそうだ。まれにとんでもない浪費家もいるにはいるが、たいていの女性はA美のように手堅い経済観念を持っていることが多く、男性はもうすこしお気楽だ、と言えるだろう。

ちなみにこれが30代になると、男性の貯蓄平均額は542万円とグッと跳ね上がる。一般的なデータだけを見ればA美がB男の預金通帳にある程度の期待をもっていたのもムリはない。

けれど人間は、特に恋愛は決してデータ通りにはゆかない。大多数にあてはまる平均がそのままあなたと彼にも通用する……ということではないのだ。

A美が語っていた通り、B男には他人に追及されるような落ち度はない。彼が遣い込んだのは自らの労働で得た給金だし、大手企業に勤め羽振りがよいとなれば若いうちに遊びたいのも頷ける。「自分の金を自分の好きなように遣ってなにが悪い!」という訳だ。彼の妻でもない限りB男の貯蓄が平均に達しないことを責められるものは誰もいない。そしてA美はまだ「B男の妻」ではなく、「恋人」でしかなかったのだから。

彼女のような悲しい結末にならないためには、彼と深い付き合いをする前にあなたにとって「決して譲れないポイント」を見定めることだ。幼い頃から経済的に苦労してきたA美には、「自分と近い堅実な金銭感覚」を相手が持っていることが必須だったのだ。その一点を見て見ないフリして結婚話まで進んでしまったことに、今回の悲劇の原因がある。

「譲れないポイント」は女性ひとりひとりの価値観によって必ず異なる。
ある女性には「顔」だとか「身長」だとかかも知れないし、別の女性にとってはそれが「優しさ」なのかも知れない。堅実な男性やエコが良いという人もいれば、「ケチなのは絶対イヤだ」という女性もいるだろう。

肝心なのは「これだけはどうしても」という点を無視して事を進めないことだ。
A美は自身も言っていたように、あのままB男と結婚していたとしても、それだけ金銭感覚の異なる相手と暮らしをともにしていれば、次第にそのズレが大きくなっていき、破たんすることが目に見えている。そう、『自分と異なる人間に惹かれるのが恋だが、結婚となると別……』ということだ。

生真面目で努力家を自負している女性ほど、「これだけは夫に譲れない点」を自覚してから結婚に向かうべきだと私は思う。結婚してから「どうしても許せないこと」に気づいても遅いのだから……。
(神崎桃子)

この記事を書いたライター

神崎桃子
体験型恋愛コラムニスト 大手ポータルサイトにて数々のコラムを連載中。男女のズレや生態、恋愛市場の時事問題は得意。文章セミナー、婚活セミナー講師も務める

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