別れることを前提に付き合っていた彼。「交際」の先に「結婚」はないの?

発言小町に「愛ってなんなのでしょうか」という投稿が寄せられました。
相談者は「彼と別れたばかり」という25歳の女性。二人で将来について話したとき、彼から「しばらくしたら上京して、自分の夢を叶えたい(だから結婚は考えていない)」と言われ、別れを決意したそう。トピ主さんは交際中、いろいろと尽くしていたものの、将来がないと分かった途端、「彼に割く時間やお金はすべて無駄」「あれこれ世話を焼くのは都合のいい女では?」と思うようになったとか。今は連絡が来ると「うっとうしい」とすら感じるそうで、「私は結婚したいとまで考えていた彼を、本当は愛していなかったのでしょうか」「愛ってなんなのでしょうか」と問いかけています。

目次

誰もが「恋愛したら結婚」という考えではない?


「恋愛」と「結婚」の関係について考えさせられる投稿ですね。相談者である彼女は、「恋愛」の先には当たり前のように「結婚」があると思っていた。でも、彼のほうはそうではなかった。タイミングの問題もあるでしょうが、そもそもの前提や価値観に食い違いがあったのかもしれません。

「恋愛」のあり方は、時代によって全く異なります。最近では、結婚をまったく視野に入れない恋愛も、さらには、性的関係だけの付き合いも“人それぞれ”という考え方さえあります。価値観が多様化し、恋愛や結婚の捉え方も変化してきていると言えるでしょう。時には「恋愛なんて結局、自分の欲求を満足させる手段に過ぎない」「金銭的にも精神的にもコストがかかるだけ」といった意見も見聞きします。「ときめきを感じたい」「癒やしや安心感を得たい」という希望や性的欲求などは、二次元の世界の存在やアイドルなど、それぞれ満たしてもらいたい相手に満たしてもらえばいいという人もいるようです。

トピ主さんの彼が、恋愛と結婚についてどういう考えがあるのかはわかりません。いつか時が来れば、好きになった女性とすんなり結婚する可能性もあるでしょう。でも今の時点では、「二人の将来」よりも、「自分の夢を叶える将来」を選びたいという思いがあり、いざとなれば別れることを前提にトピ主さんと付き合っていたようです。その事実を知り、トピ主さんは、「自分に対する愛は不誠実で、いい加減なものだったんだ」と感じ、気持ちが一気に冷めてしまった。彼を「うっとうしい」とまで思ってしまうのは、自分よりも夢を選んだ彼への怒り、そしてそんな彼を見抜けなかった自分へのいらだちといった感情もあるかもしれません。

誰もが「恋愛」の先に「結婚」を目指すとは限らない時代。後で「こんなはずじゃなかった」「振り回された」と思わないためには、誰もが恋愛や結婚に対して同じ考え方なのだと思わない、そして、自分はどういう価値観なのか、しっかり自覚して流されないこと……この二点が重要ではないかと思います。

トピ主さんが「私は絶対に、付き合った相手と結婚したい」と思うならば、自分の望む関係を築いていける相手なのかどうか、そして深く愛するに値する相手なのかどうか、じっくり見極めてから交際をスタートさせるのも有効だと思います。

恋から愛に育つ関係もあれば、そうならない関係もある


続いて、「愛ってなんなのでしょうか」という問いについて。

「愛」とは、「相手を無条件に信じ、変わらない態度で見守っていくこと」「自分のエゴをぶつけるのではなく、心の底から相手を思いやること」――そんなふうにも言われます。

トピ主さんは交際中、ひとり暮らしの彼に料理を作ったり、職場までお弁当を届けていたりしていた。しかし結婚できないとわかった途端、そうした愛情行為は「すべて無駄」と思うようになったそう。この態度について、「結局、見返りを求めていただけ」「勝手に尽くして、勝手に去るなんて自分勝手」という人も、もしかしたらいるかもしれません。トピ主さん自身も、自分の気持ちの変化に驚き、「自分は彼を愛していなかったんだろうか」と自問自答し、悩んでいます。

見返りを一切求めない“無償の愛”ならば、「いつでも上京すればいいし、あなたの望むことを私は受け入れます」というスタンスでいられるのかもしれません。しかし、それでトピ主さんが「自分の人生を犠牲にしている」と思ってしまうならば、無理して“無償の愛”を注ぐ必要はないと言えるでしょう。もしかすると、そうした“無償の愛”がいつか彼の意思を動かすこともあったかもしれませんが、今までの献身を経て、ここが限界だと判断した。それがこの恋愛の答えなのだと思います。

誰でも多かれ少なかれ自分本位な側面はあり、本物の“愛”を体現できる人間になることは、決して容易ではありません。自分本位なエゴと戦いながら、それでもできるかぎり相手を思いやり、お互いにそのことに感謝しあえるならば、恋は「揺るがない愛」に発展していくのではないかと思います。

世の中には、“無償の愛”を理由に結婚する人もいれば、「自分の願いを叶えてくれる相手だから」「人生プランが合うから」という“現実的な理由”で結婚を決意する人もいます。どちらが正しい、間違っている、ということはありません。後者の場合でも、お互いに「愛情を育て、維持していこう」という意思があれば、結婚してから良好な愛情関係を築いていくことは十分に可能です。

「感謝」の気持ちは、人を愛する心を育てる


このような悩みを投稿したことからも、トピ主さんなりに精一杯、彼を好きだったことは間違いないと思います。でもそれより、結婚して家庭を築きたい思いのほうが強かったのかもしれません。彼のほうも、自分の夢を叶えたい思いのほうが強かった。つまり今回の交際は、「お互いに自分の人生を譲れなかった」「本当の愛にまでは育たなかった」ということかもしれませんね。「同じ人生を歩いていく相手ではなかった」と考えてもいいと思います。

今回の件から学べることがあるとしたら、「感謝の気持ち」かもしれません。「お互い進む道が違ったけれど、今までありがとう」「選んだ夢が叶うといいね」――そんな気持ちでこの恋を終らせることは、ひとつのステップになるでしょう。自分の気持ちの変化を見つめ、愛について深く考えたこの経験は、決して無意味ではないと思います。今度は、結婚につながるいい恋ができるといいですね。遠くからお祈りしています。
(外山ゆひら)

この記事を書いたライター

外山ゆひら
対人関係、心や生き方に関する記事執筆が中心のフリーランスライター。読売新聞が運営する「発言小町」の相談コラムや、「恋活小町」を担当する。文芸、カルチャー、エンターテイメント方面を日々ウォッチしている。

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